Takashi Murakami
マンガというと現代のサブカルチャーと思われていますが、村上は「鳥獣戯画」から「北斎漫画」といった日本の伝統の美術にまで遡って線で描く表現を日本の美と捉えます。そして戦後に入ってきたアメリカのマンガと融合することで現在のマンガやアニメに発展したと、正確な英語と専門用語を用いてきました。日本の美を外国に翻訳したのは村上が初めて。岡倉天心が「茶の本」で日本の宗教的美意識を茶の湯に特化して紹介したことや、鈴木大拙が「禅」で西洋人に初めて分かりやすく仏教を説いたのと同様の業績なのです。ですから村上の作品には、過去の美術を再解釈してアレンジするという特徴があります。2009年に海外のオークションで16 億円で落札された「My Lonesome Cowboy」はフィギュアを等身大にした初めての彫刻ですし、「DOB」君はミッキーマウスをもじったといわれますが、それも真似というより新しいキャラの再創造といった方が適切なのです。
略歴