出典:福岡市美術館ホームページより https://www.fukuoka-art-museum.jp/
知識を積み重ねることで「基準」ができる
アート作品を前にして、あなたはなにを思うでしょうか。
感想を言葉にすることは怖いし、まして評価なんてしようがない。どう解釈したらいいのかわからない。
そんな心当たり、ありませんか?
単純に「美しいかどうか」といった、わかりやすい評価軸を超えた表現が「現代アート」ともいえます。さまざまなテーマを持ち、個性あふれるアート作品を、自分の価値観では判断できない。だからこそ「アートはわからない」と思ってしまう。そこが現代アートをむずかしく感じてしまうところではないでしょうか。
話はすこしそれますが、みなさんは「くまモン」をご存知ですよね? おなじみのあのキャラクターのデザインを手掛けたアートディレクター水野学氏は、慶應義塾大学での講義で「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力である」と述べています※。知識を積み重ねることで、センスが磨かれる。そのための3つの方法は、①王道、定番を知ること ②流行を見つけること ③共通点を見つけること だと語っています。
特に、王道、定番を知ることで、基準が見えてくるという①の方法は、アートを見る上でも参考になるのではないかと思います。現代アートの中でも高く評価され、世の中で広く知られている作家の作品を数多く見ることで、あなたの中にアートのものさしが生まれる、という考え方です。
著名な作家の現代アート作品は、意外にも身近なところにあったりします。今回は、気軽に見ることができる九州のアートスポットを紹介します。手軽に、そして身近で本物のアートを観て、感じれば、あなたとアートとの距離がグッと近づくかもしれません。
※『「売る」から「売れる」へ。水野学のブランィングデザイン講義』より
■福岡市美術館[福岡県福岡市中央区大濠公園1-6]
2019年にリニューアルした福岡市美術館。赤茶色の建物は、日本近代建築の巨匠・前川國男によるものです。大濠公園内にあり、館内のカフェやレストランもいい雰囲気。展覧会の内容に合わせた期間限定メニューなども味わえるので、アートを観る以外にも楽しみが多い美術館です。
ここには、館内に入らずとも見られる作品が2つあります。
日本を代表する芸術家・草間彌生といえば水玉模様。2階屋外広場エスプラナードには、草間彌生が初めて手がけた野外彫刻作品「南瓜」が展示されています。
●草間彌生「南瓜」 福岡市美術館ホームページより https://www.fukuoka-art-museum.jp/
2021年に設置されたばかりのオブジェ「ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ」は、ナイジェリア系英国人の美術家・インカ・ショニバレCBEが制作。色鮮やかで奇抜な模様が特徴の「アフリカンプリント」と呼ばれる布が、風を受け重力に逆らうように力強く波打つ様子が造形されています。植民地主義時代から続く社会構造や文化の混交への思い込めたシリーズのひとつです。
●インカ・ショニバレCBE「ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ」 福岡市美術館ホームページより https://www.fukuoka-art-museum.jp/
館内展示で注目したいのが、福岡を拠点に活動するアーティストKYNE(キネ)書き下ろしの13mの巨大壁画。「公共性と自由」と言うテーマで描かれた女の子は、クールな表情で窓の外を眺め、なにを思うのか。2022年12月末まで期間限定公開の作品です。
●KYNE《Untitled》2020年 福岡市美術館ホームページより https://www.fukuoka-art-museum.jp/
■あいれふ(福岡市健康づくりサポートセンター)[福岡県福岡市中央区舞鶴2-5-1]
福岡市の公共施設が入居する複合施設「あいれふ」は、超有名アーティストが共演する豪華なアートスポット。
建物の入り口そばで、空を見上げて楽しげに立つのはキース・ヘリングの作品です。アンディ・ウォーホルやバスキアとともに、ストリート・カルチャーにルーツを持つポップアートの立役者の1人です。
●キース・ヘリング「UNTITLED」 あいれふ 福岡健康づくりセンター Instagramより https://www.instagram.com/hsc_fukuoka_official/
また、建物南側の植え込みの中には草間彌生の「三つの帽子」があります。大きなリボンが結ばれた白、赤、紫の帽子はもちろんドット柄。ポップさと毒々しさが共存する草間らしい作品です。
●草間彌生「三つの帽子」 あいれふ 福岡健康づくりセンター Instagramより https://www.instagram.com/hsc_fukuoka_official/
■Community Hostel WeBase HAKATA[福岡県福岡市博多区店屋町5-9]
福岡市営地下鉄中洲川端駅近くにある、コミュニティホステルWeBase HAKATAの窓から飛び出す看板ネコはヤノベケンジの作品。大航海時代、船内ではネズミから食糧や貨物を守り、疫病を防ぐためにネコは欠かせない存在だったのだとか。その守り神に未来への希望を込め、宇宙服を着せているのだとか。
●ヤノベケンジ「SHIP’S CAT」 Community Hostel WeBase HAKATAホームページより https://we-base.jp/hakata/
■COMICO ART MUSEUM YUFUIN[大分県由布市湯布院町川上2995-1]
温泉地、観光地として人気の高い湯布院にある小さなミュージアム。国立競技場の設計でも知られる隈研吾が手掛けた建築と、村上隆、杉本博司、奈良美智のコレクションを、約1時間のツアー形式で観覧できます。
村上隆は「DOB君」シリーズと「雪月花」シリーズの全6点を展示。奈良美智の「Your Dog」は屋外のオープンギャラリーにあり、山々を背景に立つ姿が印象的です。スタッフが解説してくれるので、建築と作品を存分に味わえます。入館には事前予約が必要です。
●奈良美智「Your Dog」 COMICO ART MUSEUM YUFUINホームページより https://camy.oita.jp/
■霧島アートの森[鹿児島県姶良郡湧水町木場6340-220]
霧島の豊かな自然の中で芸術作品を楽しめる野外美術館。野外展示空間には、国内外の造形作家がこの地を訪れて構想したオリジナル作品が展示されています。桃源郷に咲き誇る花をテーマにした草間彌生の「シャングリラの華」をはじめ、村上隆、オノ・ヨーコ、ジョナサン・ボロフスキーなど、数々アーティストの作品が点在。見応え満点です。
●草間彌生「シャングリラの華」 霧島アートの森ホームページより https://open-air-museum.org/
●草間彌生「赤い靴」 霧島アートの森ホームページより https://open-air-museum.org/
記事公開:2021年11月15日