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〜気まぐれアートレポート〜初めての瀬戸芸を1日で味わい尽くす!豊島―宇野 よくばりアート旅〔後編〕

 

 

前編に引き続き、瀬戸内国際芸術祭2022の夏会期に訪れた豊島(てしま)―宇野で体験レポートをお届けします。 岡山県宇野港から船で豊島に渡り、家浦―甲生(こう)地区のアート作品を鑑賞後、いよいよたくさんの作品が集中する唐櫃(からと)地区に入ります。思わぬハプニング&トラブルもなんのその、電動アシスト付き自転車で島を駆け巡った様子は、きっと豊島観光の参考になるのでは。どうぞお楽しみください。

 

 

電動アシストの恩恵を感じながら、次に目指すは唐櫃岡エリア

家浦地区を出発すると、海を望む緩やかな坂道から山の中の急坂になっていきますが、電動アシスト自転車なら思いのほか楽勝です。時間はお昼どき。途中何軒か飲食店がありますが、唐櫃岡に目的の店があるのでここはスルーします。

右手高台の神社横に「空の粒子/唐櫃」を発見し、儚いバランス感の作品を鑑賞&撮影。唐櫃岡の駐輪場に自転車を停め、徒歩で「西本貴美子写真展〜ひとりじゃなかよ〜」へ向かいます。
メディアで取り上げられることも多いおばあちゃん写真家のユーモラスな作品は知っていたけど、ほかにも独特な視点で撮られた野菜の写真など、初めて見る作風の写真もあっておもしろい。貴美子おばあちゃんのドラマティックな経歴も必見です。

 

▲「空の粒子」立派な蜘蛛の巣が貼っているのも、アートと自然が同化しているということだと捉えよう/古民家にマッチしすぎた「西本貴美子写真展」の作品

 

時間もお昼を過ぎ、お待ちかねのランチタイム。絶対行きたいスポットに入れていた「島キッチン」は島の素材を使った食事ができる場所。混雑を覚悟していたのになぜか人もまばら――、と思ったら、まさかの臨時休業でした。ツイてない…。仕方なく、しばし腰掛けて気分だけ味わってから、気を取り直して併設の蔵での展示「あなたの最初の色(私の頭の中の解-私の胃の中の溶液)」を鑑賞。そばにある「食堂101号室」に行ってみるも大行列のためひとまず食事は断念しました。

 

▲待っていたのは無念の看板/「島キッチン」の大屋根の下で/看板もかわいくて期待値上がるも入店できなかった「食堂101号室」

 

この時点で豊島美術館の予約時間まで1時間弱あったので、ガイドマップの「片道徒歩16分」に躊躇していた「ささやきの森」まで歩いて行ってみる決意をする。 生活とアートと自然が隣り合わせにある島の時間は心地よく、景色を楽しみながら歩けたのは最初だけ。真昼の日差しが照りつける山道は想像以上にキツく、森の木陰に入っても流れる汗は止まらない。「あと3分」の看板があっても、こんなのろのろペースでは倍くらいかかる。入口の標識からも木立の中をひたすら続く山道を歩きながらふと思った。「こんなに風がないのに風鈴は鳴らなくない?」 そう、「ささやきの森」は風鈴を使った作品なのです。案の定、辿り着いた作品を前に、聞こえるのは騒がしい蝉の声ばかり。きっと風があれば違う世界が見えるのだろうけど、今日のところは話のネタとしてはおもしろいかな、ということで。

 

▲住宅があるあたりはまだ張り切っていたけど/山道に差し掛かったあたりで少し後悔/作品のある場所は素敵な場所で、風鈴が鳴っていれば最高だったな

 

 

まさかの大失敗に落胆するも、唐櫃エリア散策でリカバー

汗だくになりながら山を降り、いよいよ本日のメインイベント「豊島美術館」へ向かいます。
自転車で坂道を下ると地中に埋まったような白い美術館が見えてきます。その手前には海を望む絶景が広がる撮影スポット。そばの空き地にはピザを販売するキッチンカーがいて、海を眺めながら食事ができるみたい。後で行こうかな。

 

▲豊島美術館そばの絶景スポット。急な坂道&車も通るので撮影は気をつけて/独特な建物はアーティストの内藤礼と建築家の西沢立衛によるもの

 

美術館スタッフに13:45の予約と告げると、オンラインチケットの提示を求められる。ところが午前中に予約したのにメールを確認するも届いてない! 予約リストも確認してもらったが名前がないとのこと…。ここでようやく予約が完了していなかったことを知ります。全てのスケジュールをここの鑑賞のために組んでいたのに…。その場で予約が取れるのは15:15以降しか空いておらず、帰りの船の時間まであまり余裕がないということで、涙を飲んで入館を断念することにしました。
海を眺めながら気持ちを切り替え、この後のスケジュールを考えます。このまま唐櫃港まで下って唐櫃の作品群を見ることにしよう。当初行くつもりのなかった作品を見れば、豊島はほぼコンプリート。ポジティブに行こう!

 

▲「勝者はいない」バックボードはたぶん豊島の形/「心臓音のアーカイブ」自分の心臓音を採録することもできる(登録料1,570円)

 

港を通り過ぎ「勝者はいないーマルチ・バスケットボール」があるのは小さな公園。若者たちがこぞってシュートを決めている。青春だなー。
さらに奥へ進み未舗装な道に。静かなビーチ沿いに建つ建物が「心臓音のアーカイブ」という作品の展示場所。世界各地で録音された心臓音を聞くことができる。知らない誰かの心臓音はそれぞれ違うビートを刻んでいて、ハウス音楽を聴いてる感覚。時には不整脈っぽい鼓動の人もいてちょっと心配になったり。おもしろい体験でした。

 

 

ランチ難民にご用心! お昼ごはんは早めがおすすめ

豊島でのアート鑑賞はこれで終了。ランチをどこで食べようかとガイドブックを見ていたら、地元のおじさんが声をかけてくれた。この時間ならと豊島美術館そばのそうめん処「蒼い空」を紹介され、棚田の丘の上まで登り、ぶっかけそうめんといちじくジュースをいただく。とにかく眺めが最高でついつい長居してしまいました。

その後、家浦港へ戻る途中、島でいちばん景色のいいレストランと聞いていた「海のレストラン」に立ち寄りコーヒータイム。美術館に行けなかったからこその至福のひととき。のんびり過ごせました。

 

▲豊島美術館そばの高台にある「蒼い空」/「海のレストラン」でのんびりタイム

 

ちなみに豊島では、立ち止まって調べ物をしていると通りがかりの地元の方に何度か声をかけてもらいほっこりしました。過疎化で出会う人こそ少ないけれど、みなさんあたたかい。とはいえ生活の中に大勢の観光客が入り込むことに対して色々な思いがあるような気がして、マナーを守って鑑賞したいなと思いました。

 

 

豊島を離れ、宇野港周辺のアートスポットを巡りフィニッシュ!

家浦港に到着したのは15:30ごろ。レンタサイクルの超過料金は200円でした。船の乗船券の発券時間は出航の30分前からですが、かなりの行列になるので早めに港に着いたのは大正解でした。出航までの時間で「豊島マルシェ」でお土産を購入。16:25、満員の旅客船で豊島を後にします。

 

▲お土産は豊島産みかんのコールドプレスジュース(500円)と豊島美術館Tシャツ(3,300円)を“行けなかった記念”に

 

宇野港に到着後は、19:00まで鑑賞できる3つのスポットを巡ります。その前に港周辺のアート作品を巡り、フェリー乗り場で宇野エリアのパンフをゲット。

 

▲「船底の記憶」/「宇野のチヌ」/宇野エリアのパンフレット

 

まず訪れた「時間屋」はどうしても行きたかった場所のひとつ。地球が誕生した46億年前から海に溶けている塩を使い、絶え間なく続く時間を表現している作品です。天井からさらさらと落ちる塩をただじっと見つめる。夕方で、貸切状態だったのもラッキーでした。

 

▲「時間屋」時間の流れを意識させる神秘的な空間/静かに心の中で数える10秒の長さは人それぞれ/塩はビンに詰めて持ち帰ることができます(300円)

 

同じ通り沿いにあった作品「実話に基づく」、「赤い家は通信を求む」を立て続けに鑑賞。さすがに体力的にも限界っぽいのでここで瀬戸芸旅はフィニッシュです。

 

▲廃業した病院でひたすら建物解体の映像が流れる「実話に基づく」/地球儀がぐるぐる「赤い家は通信を求む」

 

といいつつ、駐車場までの道のりにある作品も写真に収めました。

 

▲手前の「終点の先へ」と奥が「JR宇野みなと線アートプロジェクト」/「本州からみた四国」

 

この日、朝から1日で見た作品は、全部で19作品(たぶん)。行き当たりばったりでかなり詰め込んだ旅でしたが、とにかく楽しかった!
単にアート作品を見るだけでなく、見知らぬ島の町や路地を自由に歩いてまわるという非日常感や、瀬戸内の海の景色、森や畑ののどかな風景も一緒に味わえるのが瀬戸芸最大の魅力なんだと感じた旅でした。

瀬戸内国際芸術祭2022の秋会期は9月29日〜11月6日まで。お好きな場所、お好きな楽しみ方で瀬戸芸を楽しんでほしいと思います。

 

 

この旅で感じた、瀬戸芸を上手に楽しむポイント

・効率よくまわるなら事前計画が重要
・移動手段と所要時間に加え、開館時間/営業時間も確認すること
・日焼け対策は十分に。歩きやすい靴も大事
・携帯電話のバッテリーの減りに注意
・帰りの船の時間には余裕を持って(発券は行列必至)
・イレギュラーなハプニングも楽しもう

 

(ライター:岩井紀子)

 

 

●瀬戸内国際芸術祭2022
秋会期:9月29日(木)〜11月 6日(日)
オフィシャルサイト:https://setouchi-artfest.jp/

 

 

 

 

記事公開:2022年9月24日

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